固定客化
専門店は、宝石やメガネを通してお客様という友達を作ろうとしています。
セールも何もしなくても、気心しれたお客様が来店して下さり、お茶菓子やコーヒーを飲んでコミュニケーションを図りながら帰られる。そしてまた今度は、お友達を紹介して一緒に連れて来店され、自店を通して地域の輪が広がっていく。なんと素晴らしいことだろう!と想い、それに向かってしっかりと体制を整えて行くことは、間違いなく大切なことです。しかし、そこにモノの売買がなければ、お店は継続出来ません。
その売買が伴うから販売という仕事は奥が深いのです。気心知れたお客様ばかりと、ゆっくり話をする時間は、確かに気持ちも楽だし楽しいものです。
今は止めてしまいましたが、私の親戚の宝飾店も、よく固定客中心のお店で、毎日、誰かがお茶を飲みに来ていて、その人が帰ると、また別の人がお茶を飲んでいました。
「おばちゃん、今日もギョウサンお客さんが来たやん。メッチャ儲かったやろ!」と子供ながら尋ねると、おばちゃんは「そんなことあるかいな!今日もボウズやで」って言っていた記憶があります。その時に、よくボウズ、ボウズと聞いていたのでボウズの意味が判ったのですが、おばちゃんが店で笑って、友達化してしまっているお客さんと話している最中にオジサンは、せっせと外商周りで売上を作っていました。
どんな人でも自分の好きな気心知れたお客様だけを相手に商売をして行きたいという憧れを抱きますが、商売をしている以上、やはり世の中そんなに甘くもなく、気を遣う変なお客さんも無視していては日銭が入って来ません。そのハードルをどこまで設定するかが、お店の持っている力になるのでしょう。
つまり、どんな場合においても、プロの販売員である以上、モノを通した友達づくりが前提にあるということです。その為、セールもします。セールも売上を上げるという大きな目的があるのですが、もう一つは、お客様が来店しやすい雰囲気づくりを作る為でもあります。
いくら仲が良くて、「いつでもお店に寄ってお茶飲んでいって下さいね」と言っても、モノも買わずに意味もなくお茶だけ飲みに何度も通えるお客様は、今までに相当購買してくれているか、相当神経が図太い人です。つまり、普通、「お茶を飲みに来て!」と言われても、意味なくお店には立ち寄りにくいのです。だから、セールという大義名分をもとに手紙を送ると「お手紙頂いたから来たわよ!」とわざわざ言って来店されたりするお客様もいるのです。しかしながら、セールばかりを頻繁にしてしまうと「買ってくれ」を連発しているので、この2つの加減の調整が、お客様との距離感を生み出し、最も大切な固定客化における要素になるものだと思います。