人は何のために生きているのでしょうか
昭和の流通王「中内功」という人物の話をご支援先の社長と話をしていました。
今は、後継者を息子に譲ろうとした結果、全てを失くしてしまい、幸せだったのかどうか疑問に残る最後を迎えてしまわれた中内さんですが、私にとっては、経営者としての考え方である根本には中内さんが必ず存在しています。
誰が何を言おうと戦後「友愛薬局」という小さな露店から始め、4兆円規模の日本一グループにまで上り詰めたのは、中内功さんしか後にも先にも出てこられないでしょうし、流通王であったことに間違いはありません。。
何故ダイエーが、ほかのチェーンや百貨店といろんな意味で違っていたのかに対して、中内さんは「”主婦の店”という理念の下に、ひとつの運動としてこの仕事を起こし、継続してきたからや。よそはどうかしらんが、僕らは“主婦のための、主婦による、主婦に喜んでいただける店”づくりをしようと努力を続けてきた。その結果、消費者の支持をいただき、売上高日本一のダイエーグループができたんや」と語っています。
そして、その考え方の根幹には、戦争で死にかけた時に見た「すき焼き」の夢にある事も間違いないでしょう。。
極限状態の中で見たすき焼きの夢、そして「すき焼きを腹いっぱい食いたい」との一念が、やがて「主婦が生活の糧を手に入れるのに困らないような日本にしたい」という想いにつきるのではないでしょうか。
その為には、良いものを安く提供出来る環境を作らなければならない。
三宮で店を始める前には実際に神戸で「子どもに何を買ってやりたいか?」と主婦にアンケートを取って、答えでいちばん多かったのが牛肉とバナナだったそうです。
当時、牛肉は100グラム60円だったのを彼はそれを39円で売ろうとしました。39円で売れば、いまの倍は子どもに食べてもらえるだろうと考えたからです。
そうなると松下電器(パナソニック)では、ありませんがメーカーという大きな権威に盾突くことになります。普通の凡人だと、この中で引いてしまうのですが、中内さんの本当に凄いところは、権威に逃げることなく、真正面から消費者の代表として闘うことにこだわり、誰もやろうとしなかったことを実行したのです。
また夜10時まで店を開けておくことにもこだわりました。客足が早いうちに途絶える雨の日でも、「うちは薬を置いているんやから、どうしても10時までは開けておかんといかん。急病人があったとき、ダイエーなら10時まで必ず開いていると安心してもらえる。それが信頼につながるんや」と、むやみに閉店時間を繰り上げることも決して許しませんでした。
これもあくまでお客様都合を考え、その為に何が出来るかに拘った結果出てきたものなのです。
「先生、人間は何の為に生きているのでしょうか?」とアインシュタイン博士の弟子が聞きました。
アインシュタインはその時
「きまっているじゃないか!他人のためだよ」と答えたそうです。
確かに、この言葉は真理をついていて、私達は何かを他人に与えて生きています。
電車を整備していたり、運転している車掌やタクシーの運転手、料理人、芸能人、何でもそうですね。仕事と言うものは全て他人の為に何かを提供しているものです。
それにトコトン拘れるかどうかが、仕事の質とその人の大きさを示しているのかも知れません。
今、目の前のお客様が悩んでいることや、要望に私達は耳を向けているでしょうか?