経営者のプライド
「今の環境全てが自分に責があるとしたら、その理由は一体何だろう」
あるメガネ専門店の社長は、自分が社長に就任した記念に、新しくメガネ店をオープンさせました。しかし、本店とも近いことや、立地の状況、売場の品揃え、人の面等々から判断しても、採算ベースにのせる要因は極めて低い状態だったのですが、オープンして告知した手前、必死に支店に米を送り続けました。
そして1年が経とうとした、ある時、いつもの通りに「社長、そろそろ本格的に●●店は閉めてください。」とお願いした折、通常通りの「もう少し、頑張らせて」という回答があると思いきや、「判りました。閉めます」と突然返答が出たのです。
その時、社長は、自分が招いたことだとしても出店したばかりの店を閉めるという決意は断腸の想いだったと思います。
小さな街で、新しく店を立ち上げ、1年で閉めてしまう。「あの社長はバカ息子だ」「あの店、危ないんじゃないか」「ここで折角買ったのに~」等々の評判も立つ覚悟を基に、恥もプライドも全て捨てなければ、そんな決断は出来ません。しかし、その時、社長の決断が功をそうして、今、非常に好調な体質になっております。
先日も社長に「凄いですね。とても他店が真似出来ない価格と手法で、恐ろしい集客ですね」と尋ねると、
「店を閉めた、あの時、僕の中のメッキで固められたプライドや恥みたいなものが全て捨て去ることが出来た。だから、自分が招いた結果なら、それはそれで受け止めて、だったら何が出来る?という自問自答から、他店に何を思われようとも、メーカーに何を噂されようとも、お客さんが来たくならざるを得ない店を作るという決心が生まれたのだよ。だからもう怖いものなんてない」と笑いながら言われた言葉が印象的でした。