電車の中の爆弾
先日、新潟6時40分発の電車に乗って新大阪へ向かっていました。朝の6時40分という早い時間にも関わらず、この電車はいつも満席で座ることも出来ない為、越後湯沢までの30分間は立ったままで寝ています。今回もいつもの様に一番前の車両のドア付近に持たれながら朝日が昇る見事な車窓を見ながらウトウトとしていました。
その時、1人のお爺さんが、僕の立っている側に寄ってきて、手のひらを振って退く様に促しました。朝で寝ぼけていることもあり、取り敢えず退くと、なんと、そのお爺さんは、おもむろに紙コップを出して、そこに小便をし出しました。事態が読み込めない僕は、しばらく小便をしているお爺さんの姿を眺めていると、その紙コップが、さっきまで僕が立っていた位置に綺麗に並べられています。それも3つも。
そして用を済ませたお爺さんは、何も言わず自分の席へと戻っていきました。
さあ、ここからは大変です。万が一、電車が急ブレーキを踏んだり、激しいカーブでの揺れが発生した途端に、その溢れんばかりの紙コップから小便が流れ出してしまうかも知れません。そして僕の立っている周りにはお客様も大勢いる為、身動きが取れず、しかも、僕の持っているカバンはコロコロの付いているバッグで、非常に重たい為、非難の仕様がないのです。
そして、そこで初めて、事の次第を飲み込めました。「これはヤバイ!どう考えても最初の被害者は俺だ!」
この非常事態に周りに助けを求めようと見渡すと、皆の視線は、全て僕に向いています。僕が小便した訳でもないのに、場所を取られた一番の被害者なのに、「お前が何とかしろ」みたいな目で強く行動を促されます。
仕方なく、車掌(運転している人しかいない)に言いに行こうとすると、そこには、大きく「運転中は声をかけないで下さい!」と張り紙がされていました。
しかし、そんな事も言ってられない、次の六日町を出発してしまえば、そこから
約20分以上、電車は止まらないのです。この六日町で車掌に何とかして貰わなければ、その小便爆弾が爆発してしまうかも知れない為、それを防ぐ唯一のタイミングは、今しかないのです。
これは言うしかあるまいと「すいません。お爺さんが、さっき紙コップに小便してしまったのですが」と運転している車掌に声を掛けると聞こえているのか聞こえてないのか判らない反応で「はい」と小さく返事をしました。
まっ良いや!これで俺の役割は終わったと安心していたら、次の六日町で、その車掌は、何事もなかったかの様に確認もせずに、そのまま出発してしまったのです。
そこで「完全に切れた!」と昔の僕なら騒ぐのですが、最近、仏の心を身に付け出した僕は、何も言わずバッグからティッシュを3枚取り出し、その小便を掴んで、車掌が運転している車掌のスペースに入って3つ紙コップを綺麗に並べてやりました。
「お前も、この恐怖を味わえ!それで目が覚めるだろう」
「仏の心で、降りる時に蹴って倒さないでおいてやるから感謝しろ」
車掌に言ってやりたい「運転するだけがあなたの仕事ではないぞ!あなたの仕事は、快適にお客様を目的の場所に連れて行くことだ。その快適さがサービス精神というものではないのか!」と。
まさに小学生レベルの事態でした。