琵琶湖
これは、私の話ではなく、友達の話である。
「あの課長、たまらんわ！絶対にこんなん無理や！納期に間に合う訳ないで！俺に死ねって言うのかアイツは！！！」って言い続けていたＡの前職時代。学卒で入社したて、世間も何も知らないＡは、東証一部上場のその会社で働いていました。会社は、決められた組織で動き、次から次へと振ってくる取引先からの依頼の嵐にシステムエンジニアはノイローゼ（今だと鬱病）になって引きこもり、先輩連中は、自分の仕事をこなすことで精一杯な為、人に同情している余裕など一切ない中、１人ブツブツとコンピューターを叩き続けていた当時、１人の先輩が声を掛けて来ました。
先輩「琵琶湖になれ！」
Ａ 「何ですかソレ！意味全然判らないすけど」
先輩「お前、出身が京都だから琵琶湖知ってるだろ？」
Ａ 「当たり前じゃないですか？知らなかったらアホかモグリですよ」
先輩「俺、琵琶湖が好きでな、時々、出張のついでに琵琶湖を見に行くのだけどさ～。あれ、世界でも数少ない古代からの湖って知ってた？」
Ａ 「そんなん、知る訳ないでしょ。先輩、暇なんですか？暇やったら手伝って下さいよ」
先輩「叩くよ！お前は！良いから聞けって。古代湖ってさ～、１０万年以上も前なんだぜ。それって凄くない？ほとんどの湖が、１～２万年で消滅するのだから、メチャクチャ貴重なんだよ」
・・・・・・コイツは、絶対に湖オタクに違いない・・・・・・・
Ａ 「判りました。今度、実家に帰ったついでにフナ寿司でも買ってきますね」
先輩「いいよ、フナ寿司は、あんまり旨くねえから」
いや、スゲエのはさぁ～琵琶湖には、周囲の山々から数多くの川が流れ込んで来るのだけど、湖から流れ出しているのは、瀬田川１本だけなんだってさ。何故かと言うと琵琶湖は、どの湖よりも低い位置にあるから全ての川の水を受け入れられていて、そして、出す時は、１本の出口にエネルギーを全部集中させているってこと。
その結果、瀬田川が京都に入って、お前も知ってる宇治川に変わり、その水を使って日本で始めての京都水力発電所が出来たと言う話。だから京都は昔から都が出来て１０００年続いているんだぜ。俺らもそれと同じ。社会に出たら、色々な要望があって理不尽なことも押し付けられるし、出来るものもあれば、出来ないのもあるけど、そこで、まず一旦は受け入れるという姿勢をしないと勤まらねえぞ！
そして、まずは自分自身の度量を大きくしてみな。今から低い姿勢だと様々なものが集まって来て、人にも教えて貰い易いからね。そしてある程度身に付けたら、それを出すときには集中させて一箇所に出す。これが社会人の王道だよ。」
Ａ 「・・・・・・・・」
先輩「って課長が、発破をかけて来いって言われたので。何か、お前、期待されているみたいだから良かったな。どうせ部長か誰かの受け売りだと思うけど、言ってる事は確かだと思うよ。じゃあな、頑張れよ！」
この言葉を今でも忘れません。
