値引きの強要
某ご支援先での出来事である。
先日、ホテルの一室を借りて宝飾の展示会をしたそうだ。
商談相手は、中国人。
約20社が来てくれて、売上は最初の30分間で600万円を越えたそうだ。
売れた宝飾品はダイヤモンドというよりもカラーストーンで、商談相手がバイヤーで
あるので、本国で売れるものを厳密に査定していく。
そこでこんな一幕があった。
中国は、日本よりも値切る文化がある。
付いている売価は、考慮に考慮を重ねたベストプライスで設定していたのだが、クロージングになると、誰もが当然の様に値引きを強要してくる。
中には700万円ぐらいを買っているオーナーもいたらしく、「これだけ買ったのだから、あと10%、20%割引しろ」という様な事を通訳を交わして言ってきた。
先方の殺し文句は決まっている。「値引きしないのなら買わない!」だ。
喉から手が出るぐらい700万円という売上は欲しい。そこで最終決断は社長に委ねられる事になる。
社長は考えた。一瞬であるが、値引きを受けようかとも迷う。
でも、この商品を自分が勝手に値引きする事は出来ない。社長といえども、そんな権限はない。
何故なら、この商品を出すために、造りこみをした社員、商品を検品した社員、そして一緒に会場を手配し、同行し、準備してくれた社員、「頑張って下さい!」と送り出してくれた本社や各支店で、今も頑張って働いてくれている社員、そして、その家族の顔が過ると、勝手に自分が目先の売上が欲しいからと言って、利益を削る事は出来ないからだ。
それを見た先方の幹部の1人が、「判りました。その10%分は私が負担しますので、その価格でお願いします」と思ってもいなかった回答が返ってきたのである。
結局、値引きはせずに700万円が売れたのであるが、その気持ちに感動した社長は、自分のサイフから気持ちとしてリングを先方の幹部にプレゼントされたのです。
先方の幹部は、それを受けて、非常に喜び、オーナーも喜んだそうです。
そして本日、そのオーナーからお呼びが掛かり、商品を追加で買いたいから、高額を中心に持って来て欲しいという連絡が入り、僕の勉強会が終わった後、そのまま商談に向かって行きました。
本日、売れたかどうかは判りません。
でも、ここで大切な事は、安易に値引きしても、こんな対応にはなっていなかったと思います。
国民性は違っても、社長の想いとポリシーが伝わり、そこで本当の意味での信頼というものを感じられたからこそ、次に繋がっているのだと思います。
その場で値引きする店は、世の中にごまんとあります。それを否定している訳ではありませんが、理由のない値引きは、自分達がつけている価格に対するポリシーが会社にないという事を物語っていて、
それは間違いなくお客様に伝わってしまっています。
確かに、僕が言っていることはキレイ事かも知れません。商売はそんな甘いものじゃないと言う事も判ります。
でも、これからは「カッコ良い売り方を目指したい」という想いもあるのです。
相手を見て値引きする。値引きを強要されたら値引きする。
そして利益を削り、社員の給料も削られる。
安く売る事が正しい事。
これからドンドンと付加価値のない商品、またはお店は淘汰されていきます。
TPPなんて、その典型で、ドンドン関税撤廃のもと、安く出来る商品が入ってくる。
自店のポリシーは、どこにあるのか?
そんな適当に価格を設定しているのか?
という事を考えさせられた出来事でした。
まぁ~かと言って、百貨店でもクリアランスとか大儀名分がある時はセールをしているので、セールの値引きは否定する気は全くないのですが、その場で値切られ、値引きするという部分は、やはりカッコ良くない気がするのですが、皆さんはどう思われますか?