非効率な中に
「空いたお皿を下げても宜しいでしょうか?」
昼食を取ったレストランで声を掛けてくるのは、大体は新入社員である。
僕も、昔、レストランでバイトをしたことがあるのだが、上の人からよく注意されたのは
「お客様が食べ終わられたお皿は即、下げる様に!しっかりと見てなさい」
との事だった。
「まだ、あの人、食べてるやん!」と思いながらも、注意されたらムカつくので、意地になって、お皿にまだ具が残っていても、食べ終わったものとしてもお皿を下げてしまっていた。その都度、何度もお客様から怒鳴られた経験があり、店長は、お皿の代わりに頭を下げていた。
経験した人は判るが、このお皿を下げる間を覚えるのは時間が掛かるものなのだ。
その為、案の定、僕に声を掛けてきたレストランの社員も、明らかに間が悪かった。
僕のお皿には、まだ大好きなザーサイが残っていたのだ。(いや残していたのだ)
しかし、ここは昔、経験したよしみで大人の対応をしなければと「どうぞ!」とニッコリと笑いながら大好きなザーサイを食べずに下げて貰らう事にした。
そして、次に、よく言われたのは「テーブルを回ったら手ぶらで帰ってくるな!」であった。
要は、他のテーブルでも空いているものがあれば下げて帰ってこい的な感じなのか、またまた効率化を考えているのか判らないのだが、オーダーを持って行くときも、いくつかのテーブル分の料理を乗せて持って行っていた。
これ、お客様の立場から改めて見ると違和感を感じる。
隣の席に料理を持って行って、クルリと回ってこちらに料理を出すのも、何かついでの様な感じがするのだ。
繁盛している居酒屋じゃないんだから、やはり効率的ではなくても、一つのテーブルに料理を運んだら、また戻って、こっちの料理を持って来てくれれば、キッチリとしている様に感じられるのではないだろうか?
僕は非効率な中にこそ、他店との差別化要素が隠されていると思う。
例えばDMをお客様に出す時も一通一通、手書きで宛名を書くのは、面倒である。
それならラベルシールを打ち出してペタッと貼るだけでも郵送してくれるのだから、そちらの方が効率も良いし、時間も短縮出来る。だから、皆、そちらの方を選択する。でも、そこで手書きで出せば、絶対に目立つのだと思う。
人は必然的に面倒な事や邪魔臭い事は、一気に済ませたいと思い、効率化に走ろうとするものだけど、本当に大切な事は非効率な事にあるのだ。
そこに気付くだけで、他店よりも差が生まれるのだけどなぁ~。