船は出て行くよ、煙は残るよ
昨日、僕のチームのメンバーが、新たにチームリーダーとなって出て行くこととなった。
嬉しい反面、チームの4番バッター的な存在が抜けると正直、来年の実績は厳しくなる事は見えている。
でも、やはり、心から嬉しいものだ。
そのメンバーは、ここまで来るのに本当に苦労した。(本人は思ってないかも知れないが)
馬車馬の如く、努力というものを誰よりもしてきたとも思う。
それを神様は、じっと見てくれていたのだと思う。
年中高温の熱帯地域で育った木には年輪がない様に、厳しい冬を乗り越えたから年輪ができ、味が出てくる様に、万物の一つである我々、人間も本当に実力が付き、味を出すのも同じ様なものだと僕は信じている。
そして、卒業した人間に対して、僕らが維持しなければならない事、それは少なくなったメンバーでも、今年の実績(1億円)を落とさないという意地を持てるかどうかになる。
正直、僕を含めた残されたメンバーだけで、今年の実績より1円でも多く予算を達成すると宣言しても、今は全く見えないし、それを聞いた誰もが、鼻で笑うだろう。
だから、別に言うつもりもないし、会社に申請するつもりもない。
僕らだけが、そこに向けて突き進もうと思えればそれで良いと思っている。
あくまでの送り出す側の意地である。
タツの本の中に、SONYが東通工と言っていた時代に当時社長だった井深さんとの会話があった。
用件を終わって帰ろうとすると井深さんは「まだ良いでしょう。お茶でも飲んでいらっしゃい」と言ったそうだ。井深さんは、胸に名札の付いた作業服を着ていたらしく、お茶を飲みながら、こんな話をしたそうだ。
「ねえ、佐藤さん。ウチは、まだちっぽけな会社ですが、あと30年もしたら、きっと東芝や三菱電機を抜いて見せますよ」と
東芝、三菱といえば、誰もが知っている超大企業。それを誰も知らない町工場の社長が超えると言うので、その理由を尋ねると
「夕べは僕も、副社長の盛田も、いやスタッフ全員が夜の11時まで仕事していました。今日も10時ぐらいになると思います。いいですか、今頃、三菱や東芝の役員さん達は、お揃いで赤坂や新橋に遊びに行っていると思います。そうすると1日に5時間は、あの人達よりも僕達の方が働いている。1日に5時間、1ヶ月で150時間。1年で何時間になりますか?」
と言って笑ったそうである。
誰か忘れたが、どこかの創業者が、みかん箱の上に乗って、数人の従業員の前で「この会社を日本一、いや世界一の会社にする」と宣言していた光景を映画か何かで見た記憶があるが、一見、滑稽に見えても、その真剣な姿に心を打たれたりもする。
そんな話を本日、同行していたメンバーに話をしていた。
メンバーの顔が、心なしか変わった気がした。
船はぁ~出て行くよ~ ♪ 煙は残るよ~ ♪ 残る俺らはよぉ~ぉぉ ♪ 目に涙よ~
佐橋、頑張れ!
俺らも頑張るからね。