台風15号にて
若いうちは、苦労は買ってでもしろ!と人は言う。
何事も経験である。経験の中で人は自力というものを蓄積しタフで強い体を形成できる。
よく、学歴は高いのだが勉強ばかりしてきた新入社員よりも体育会で育った新入社員の方が人気の高い理由の一つに、精神的な苦労を沢山経験しているという理由がある。
現状、小学校でも先生は大きな声を上げて「集合!!」とか「コラ~!ダメだろ~」みたいな注意も出来ないのだそうだ。それが威圧として捉えられるというのだから、何も言えなくなる。手招きを必死でしている光景は異様だ。
そのまま「ゆとり教育」で育った人間と、蹴飛ばされ、暴言を諮れながらもくらい付いてきた人間とでは、どちらがタフかと言うと一目瞭然だ。
きっと、後者から見れば、1ぐらいの打撃であっても、前者にしてみれば、10ぐらいの打撃に感じてしまい、精神的に潰れてしまうかも知れない。
だから、ドンドン苦労をすれば良いのだが・・・・・・
昨日は、台風15号(ロウキー)が関東に直撃した。
僕は、宝飾のボランタリーチェーンで会議をしていたのだが、正直、台風というものに対して怖さはなく、直ぐに通り過ぎるだろうと思って意識する事はなかった。
勉強会中も外から変な悲鳴が聞こえたり、ビルの上から雨モリがしてきたり、ガラスが割れたりと色々、騒動があったのだが、僕は話をすると何かが憑依するので19時まで、一方的に話続けていた。
さてさて、話も終わったし、品川から新幹線に乗って帰ろうとしたら
「先生、新幹線は全線ストップですよ!」と言われた。
でも直ぐに開通するだろうと思って近くの料理屋さんで、理事のメンバーさんや社長と食事をしながら待つ事に。
しかし、20時が過ぎ、21時になっても新幹線は動かない。さすがに、今日はヤバイと宿泊を探す事にしたのだが、東京23区は全て満室か、一泊3万円近いハイグレードホテルしか開いてない。
仕方ないので横浜まで出て、桜木町の一泊7000円のマンダリン
ホテルが唯一取れたので、そこに宿泊する事に決めた。
さてさて、22時半にもなるし、そろそろ京浜東北線も動き出しただろうと外に出ると、品川駅は改札が封鎖されているという。つまり、人が溢れていて改札まで辿り付けないどころか駅に入れないのだ。
その為、道には、人が震災の時の様に大名行列の様に歩いている。
先方の社長が、タクシーで桜木町まで送ってくれると言ってくれたのだが、全く捕まらず、どう考えても桜木町まで行く手段がない。その時、時刻は23時半を回っていた。
道に人は溢れていて、僕と先方の部長とか車に轢かれそうになりながらも必死で手を上げて動き回っていても、全てが回送か迎車である。
社長も焦っているのかと見ると、遠くの方で傘を振ってゴルフの練習をしていた。「社長~・・・・・そこは道端何ですが・・・轢かれますよ」
しかし、ここからウルトラCを社長が起こす。
回送で、僕の前を通り過ぎた1台のタクシーが、遥か先の道端で素振りしている社長の前の信号で止まったのだ。
通常なら、回送だし、信号待ちしているタクシーな為、どうも出来ないのだが、社長は勝手に、そのタクシーのドアを開けて、何やら運転手と話している。
「社長~・・・・・それは回送ですよ~」と内心思いながら次のタクシーが来ないかと探していたら、なんと、そのタクシーが桜木町まで連れて行ってくれるというのだ。
この社長、さすが、大物だ。凄い!!!と驚愕しながら、品川から桜木町までタクシーで帰れることになった。道端には、恨めしそうに眺めている大勢の人がいた。
ホテルに到着したのは1時過ぎ。
そこからお風呂に入って、次の日は、京都の東舞鶴に10時半までに入らなければならない。
それには6時の桜木町駅から新横浜までの電車に乗り、6時半の新幹線に乗って、京都に着き、8時55分の特急に乗れば間に合う。
睡眠は3時間、後は電車の中で寝れれば良いと、そのスケジュールで新横浜駅に着くと、当然、人で溢れていた。新幹線が朝の通勤電車の様に駅員に押し込まれて人が乗せられている。
挙句に、小田原かどこかで木が倒れていたらしく大幅に電車は遅れている。指定は当然無理だし、グリーンも何も、その通路まで人の頭しか見れない状況だ。
でも、飛び乗るしかない。これに乗らないと、大切な支援先に行けない。
息が苦しくなる程の人の中に押し込まれ、僕も何とか京都に30分遅れで着いた。
でも、これでも11時には着けると思い、駅で特急券を買おうとすると・・・・・
「全て特急は運休です。舞鶴には本日は昼過ぎまで行けません」と淡々と言われてしまった。
G-END。ここで物語は終わった。
薄れ行く意識の中で、僕は何とか家に辿り着き、眠りに着く事にしたのだが
何か、一回り大きく成長出来た様な気がした。