それ以上でも、それ以下でもない。
周りで急激に禁煙が始まっていた。
日本たばこ産業の全国6工場の2工場が被災されて、主要銘柄の供給が出来なくなっている為、この際、止めるキッカケとして捉えられたのだろう。
地方では、あまり気になっていなかったのだけど、大阪に戻ってくると、やはり僕の好きな銘柄が、ほぼ品切れの嵐になっていた。
僕がタバコを止めるのは、実は簡単で、今のタバコ以外は、あまり吸いたいと思わない。
以前に、前のタバコが急に不味く感じた時、今のタバコに出遭うまで自然に1ヶ月以上も禁煙していた。
しかし、ないと判れば探したくなるのが、僕の昔からの癖で、小学生の頃もガンダムのプラモデルを買いにバスで1時間以上離れたところまで行ったり、コミックの最新刊がなければ、全書店をくまなくチェックし、運良く手に入れて来た。
そういう時は、何か変な勘が働くみたいで、「ここにある!」と感じ、大概、手に入らないものがあるのは、人が寄り付きそうもない、小さな玩具屋や書店だった。
そこで、今回も、誰も行かないだろう小さなタバコ屋を巡って見つけ出した。
店頭で「アクア!下さい」と言うと、不機嫌そうなオジサンが奥から出てきて、一箱出した。
「そうだ!しばらく手に入らないから三箱ぐらい買っておこう!」と思って
「三箱下さい!」って言うと、そのオジサンは「こんな時だから、一人一箱以上は売らない」と怒られてしまった。
「うっ正論だ!ごめんなさい。一箱で十分です」と頭を下げて一箱のタバコを買った。
オジサンは「よし!協力してくれたから飴を上げよう」と言ってザルに入った飴の中から一つくれたのだが、こんな感じでオマケを貰ったのは、小学生の駄菓子屋以来である。
5月には、通常出荷になりそうだが、それまで大阪にいる間は、オジサンに毎回、飴を貰って一箱のタバコを握り締めながら帰る事になるだろう。
さてさて、全く話は変わるのだが、僕らは、商売活性化における支援として様々な提案をしている。
一応、現場の事は、十分に判っているつもりであるが、それでもドンドンと提案する。
その視点は、全て顧客目線における提案だ。
大きい会社だと、大体、優秀な経営者は、現場へは頻繁に行かない。その分、他の競合他社や、時代の頭を走る店舗に行ったり、セミナーに参加して情報を収集している。
何故、現場に頻繁に行かないか?
答えは簡単だ。現場に入り込み過ぎてしまうと、現場のオペレーションや忙しさを痛感し、新たな提案が何も出来なくなるからだ。
店舗を進化させようと、あんな事やこんな事を取り組もうとしても、現場に入り込みすぎると、「社長、それは、今の自店じゃ無理ですよ!」という言葉に同調してしまい、販売スタッフと同じ考え方で「そうだよなぁ~」と言って、やりたい事も実現出来なくなってしまう。
経営者というものは、最も勘を働かせ、今時点ではなく2年、3年先も見据えた舵取りをしていかなければ、誰も未来を見据えた動きなど出来ない。
ほとんどの従業員は変化を恐れ、昨日と同じ今日を過ごす事に安心感を抱き、新たな業務にチャレンジしたいという願望を抱かないものだからだ。
でも、現状維持という言葉はなく、進化か衰退しか進む道がない以上、少しでも前に進もうとしている会社しか生き残れない。
それが小さい会社の経営者であれば、経営者自身、店長であり、販売員であり、企画屋でもあり、普段は、店頭に付きっ切りになるので、そんな時間は取れない。
そんな中、僕らは、本来、経営者がするべき、他社を見て、成功店のノウハウを整理して、時代の芽を直接伝えている。
メーカーさんや問屋さんの言葉だけでなく、そこに商品をかまさない、純粋に、活性化している専門店の動き、これが、本来大切だからなのだ。
常に進化している顧客に、期待以上の価値を与え続ける事、それ以上でもそれ以下でもない。