地方の商売
そこそこの地方(田舎)で流行っている店の典型が割烹料理屋である。
いくら都会のミシュランガイドで星が付いていようが、決められたメニューから選ぶのと、事前のお客様の特性とその日の一番旬な食材を基に料理が決められる割烹料理屋では比較にならない。
僕が、毎回伺う度に楽しみな新潟でのご支援先との夜の会食も、本日の食材のネタに対する報告が料理人から、当日にあったぐらいだから、やはり徹底している。
その日の食材は、「あんこう」だった。
あんこうは、テレビでも良く見るが、魚体が大きい上に深海魚のため身が柔らかく、表皮も滑りやすいので、まな板では無理で、下あごを引っかけて上から吊し、口から水を注いで重みを付けて裁く手法である。はいた皮にはコラーゲンが豊富で、腹を割ると海のフォアグラとも呼ばれる「あんきも」と美味しいとこだらけ。
あんこうは捨てるところがほとんど無く、鋭い歯がある口だけが残るのだから凄い魚である。そして今は特に肝も大きく旬である。
こんな旬な料理をご馳走して頂き、楽しい会食をさせて頂ける自分は本当に有難いことであると、しみじみ思った。
さてさて、今回は、旭川動物園が、何故、今の土台を作ったのかという話から入りたいと思う。
北海道にあるその動物園は、現在、日本一の動物園であるだけでなく世界を見てもトップグループの動物園なのであるが、ほんの10年ぐらい前は入園者もまばらで、閉園の話も上がったぐらい厳しい状況だった。
そこで、彼らは、どうすれば入園者が増えるのかを考えるにあたり、自分達に基本の質問を投げかけた事から始まる。
「なぜ、この動物園には人が集まらないのだろうか?」
「面白くないから」
「だったら、自分達は、その面白くないと思われる動物園での今の仕事が面白いのか?」
「仕事は面白い」
「何が、面白い?」
「動き回っている動物と触れたり、見ているだけでも飽きないから」
これが、旭川動物園の基本的価値を作った「行動展示」のもとであった。
先日も、メガネ業界を代表するセレクトショップに視察旅行で行ったのだが、フレームの種類がメチャクチャ展示してあった。
僕達では絶対に売れないと思えるデザインや、カラーもピシッと揃えてある。
そこに一緒に行った経営者の誰もが、メガネを選ぶ消費者の立場に戻り、本当のメガネ屋としての楽しさである原点を教えて貰った。
創業者にしても、ニ世にしても三代目にしても、自分が店をするなら、最初に「これをやりたい!」って想いが少なからずあった筈である。
自分が生れた場所で大手チェーン店の真似をしたメガネ屋を開きたいとは、誰も思っていなかった筈でもある。
商売は相手を喜ばせ、自分で楽しんでこそ、伝わるものである。そして地方は、最初の割烹料理屋の話ではないが、必ず相手(人)を見て商売をしなければならない。
それが信用を生む。
だから、地方の商売は面白いのだ。