忘れてはならないこと
ヤギ飼いが、自分が昔から飼っていたヤギの群れの中に野生のヤギ達を一緒に囲いの中に入れた。ヤギ飼いは早く野生のヤギを手懐けようと、彼らに多くの餌を与えたのだが、従来から飼っていたヤギの群れには、飢え死にしない程度の餌しか与えなかった。
そして、しばらく経ってヤギの群れとヤギ達を牧草地に連れて行くとヤギ達は、一目散に山の奥に逃げて行く。それを見たヤギ飼いは群れに向かって「あんなに世話をしてやったのに逃げるとは、なんて恩知らずなのだ!」と叫んだ。
すると一匹のヤギがくるりと振り返り
「僕達が用心しているのは、あなたのそこなんだよ。あなたは長年慣れ親しんだヤギよりも、僕達を大切にした。きっとあなたは、この先も、また別の者がやってきたら、同じ様に、新しい方を大切にするだろうからね」
イソップ童話に出てくる話の中に出てくるヤギ飼いの話である。
小売店でもメーカーでも問屋でも、最初に付き合ってくれた会社や顧客は、一生大切にしようと考える。しかし、月日が経つに連れてその感覚は忙しさの中で麻痺して行くのだろうか?
ある宝石の企画問屋さんが、明らかに商圏がバッティングしているにも関らず、先方の了承なしで同じ企画を別の小売店にDMで実施していたことを共通の顧客からの直言で判明した。
当然、それが判明すれば不信感を抱いてしまい、そのまま企画を実施しても失敗してしまう。
そこで真意を確かめようと、その問屋さんに話を伺うと「チラシでなくDMだから直接●●さんには影響ないでしょ!」と言い切った段階で、今までの関係は終わりを迎えてしまう。
一番大切な事は何なのか?何を守らなければならないのか?
信頼を築くには、多大なる時間を要するが、失うのは一瞬であるという言葉をその時、噛締めても覆水は盆には返らない。
しっかりと足元を見据えなければ、全て失ってしまうのだ。