客に損させてどうする
赤福や白い恋人等々も含めて、聞かせて上げたい話があります。
それはコーヒー用フレッシュクリームの「スジャータ」です。
家の冷蔵庫に必ず入っている「腐らない牛乳クリーム」ですが、これを最初に発売した
時は瓶だったそうです。
これを全国に出荷していた訳ですから、郵送中に瓶が割れるケースも多く、その損失に対する経費が年間に300万円を越していたと言います。これでは、割りに合わない為、瓶を紙パックにしようと検討し、見積もりを出させたのですが、紙パックの方が逆に高くついたのです。
それも普通の紙パックだと2000万円。上質の紙パックだと4000万円の経費が新たに掛かることになり、それを聞いた社長は困り果ててしまいました。
そこで、社長は、ある宗教の会合で、たまたま隣に座った70歳ぐらいのおばあちゃんに「これこれこういう経緯で、私は今どうしようかと迷っている」とグチを言ってしまったところ、そのおばあちゃんは「そんな事で悩むことはない。私には瓶だか紙パックだか難しい経営等の話は判らないけど、何を使ったらお客さんが一番喜ぶんだい?」
と笑って聞いて来たといいます。
「そりゃ、うちは年間4000万円の経費がかかるけれど、上質の紙パックを使うことだと思う。これならきっと喜んでくれるに違いない」と答えると
「だったら話は早い。それを使えば良い」とおばあちゃんは、答えました。
「でも、それでは、うちが損してしまうことになる」
「客に損させてどうするんだい。損は、あんたがすれば良いんだよ」という会話の内容です。
これを機に社長は、4000万円の経費を掛けて、今のスジャータを作り上げたらしいのですが、商売の本質を物語っている様に思えます。
確かに「損して得とれ」という言葉は、よく判るのですが、儲からなければ会社は存続出来ないことも事実としてあります。しかし、自分は何の為に商売をしていて、お客様に何を伝えて生きたいのかという本質に戻ったときに、最初は少しの儲けでも使命感という大きな役割が企業を存続させる大切な要素であると伝えている様に思えてなりません。