不調和音
今から20年以上も前、僕はバンドを組んでいました。ベースを担当していたのですが、素人の集まりでしたので音合わせも大変です。最初は、ハウンドドッグやBOOWYのカバーから始まり、除々にオリジナルへと移行していくのですが、やはり一つの曲を完璧に合わせ様と思うと全員のレベルもまた合わせなければ作品には到底なりません。
どんなにギターが素晴らしくても、どんなにボーカルが上手くても、ベースが、とちってしまうと、全体のテンポがくずれ、音のバランスが狂い始めてしまいます。
そこがプロと素人の大きな違いなのですが、そういう不調和が感じられる音楽というのは、しっかりと聞いている観客にとっては不快なものに聞こえてしまいます。
これは、お店も同じことです。
誰かの、ほんの少しの不調和でひどくお客様が不愉快になってしまうものです。
しかし、その不調和の原因が、判ると、音楽と同じように、全体を変えなくても少しばかりの修正で済んでしまうことかも知れないのです。
昔、東芝の会長に就任した時に土光敏夫さんは、「東芝の悪口を耳にしたら、すぐに教えてもらいたい。悪いことを教えてくれた人に対してお礼を差し上げます。但し、誰が言ったかだけは、言わないで欲しい。誰が言ったかを聞いてしまうと、その人に対して悪感情が残ってしまうからです。だから名前は伏せて欲しいのですが、悪口は徹底的に教えて欲しい」と発言されたそうです。
悪口というのは、この不調和の兆候の始まりかも知れません。そこに蓋をしてしまうのではなく、トップが徹底的に改善していく姿勢に取り組むことによって、いずれ素晴らしい作品になってくると言えるからでしょう。