商売の本質
「お客様は神様」であるという信念を商売人は大切にして来ました。しかし、現在の商人においては、そうは言っても「客なんて流行に流されるバカなものさ」と驕り高ぶっている人たちも少なくありません。何故、江戸時代から言われてきたこの言葉が今でも残っているかと言うと神様という存在に対して非道な商いは通用しないという自我を込めていたからなのです。そしてその具体的な現れが安かろう悪かろうではなく、品質や価値第一という商売の姿勢があったからなのです。お客様を軽く見ることは自分の商売を軽く見ているのと同じことです。ゆえに自分の仕事をバカにしていて成功などするはずもありません。今の時代はさすがに粗悪品と言われるものは少なくなりましたが、昔の職人は日本一、価格以上の価値を出す優秀品を販売することにプライドを持っていました。その為にその商品を本気で地元のお客様に広めて行きたいと思った場合、原価が多少高かろうが、まず優秀品を広めて自店の信用を売り、然る後に合理化して行こうと言う哲学があったのだと思います。
確かに商売は利益が出なければ継続出来ません。そんなことは誰もが判っています。しかし、料理人でもお医者さんでも何かを本気で始める場合、勉強したり、修行したりする期間は、どんな人でも存在しています。その期間は微々たる給料でも、勉強料がかさんだとしても、そこで身に付けた経験をもとに、後で大きく成功している人がほとんどである事実も確かなのです。