3年間の記憶
バカの壁で大ヒットを飛ばした脳解剖学者の養老孟司さんが、「3年間持ちこたえた記憶は永久に保存される」と著書の中で述べられていた。その話に興味というか、心に突き刺さるものがあったのか判らないが、メガネ店の経営者であるヨシ君(仮名)は考えた。「自店がお客様の記憶の中に3年間残るには、どうすれば良いだろうか?」お客様の記憶の中でも自店が永遠に行き続けるには、これをまず徹底するしかないのだと。
しかし、これは口では言ったものの中々難しいものである。
確かに3年前の店内催事で1本150万円のダイヤのフレームを買って頂いた米山さんのことや、逆にブランドサングラスを万引きした少年A、店内に遊びに来られたら必ず6時間は帰らない三崎のオバサン等々、本当に鮮明に思い出すことが出来るのは、よっぽどのインパクトがないとダメなのだ。「イヤ待てよ!メガネの購買サイクルが2年半から3年ならば、再来してくれれば、おおよそは永遠に覚えてくれる確率が高いと言う事になるのかも知れない。例え、他店に浮気をされても、引越しされても、一応、自店の記憶は残るかもしれないのだ。」と思ったヨシ君は、まず1年間に1000名の新規客名簿を取得する為のチラシやポスティングを徹底させた。そしてそこから来店時にお客様の感情が動く接客や特典、対応を最低1つは印象に残る演出を心掛けて行った。そして印象に残ったと思われる点を販売カードのお客様の名簿欄に転記することを販売員さんに義務づけた。そしてそれを毎日チェック・チェック・チェック。感動度合をアンケート再度確認し、3年間の期間を決め集中砲撃を掛けた。さあ、今では、そのお店はどうなっているのだろうか?そう、上得意様のお客様を含め、しっかりと仕組みが出来上がったのである。
結局、商売は人が幹である。人を通して人が販売する。この人に焦点を絞って、人に興味を持たなければ仕組みは出来る訳がない。キッカケは些細なことであるかもしれないが、得てして動き出す時は、そのようなものである。